時を紡ぐ果実 梨・りんご
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ひと月前に載せた「梅雨の青い木の実」その後どれだけ生長しただろうか。
梨・林檎はひと回り大きくなってずっしりと重たそう。
もう少しで成熟の時を迎える。
無花果は9月に入ってから。
柿・栗はやんちゃ坊主からお兄さんに成長している。
大人になるのは秋の終わり頃。
姫林檎はちいさな実がほんのりと紅をつけはじめている。
ぶどうはいろんな種類があるけれど、有島武郎の一房の葡萄は赤や黒ではなくて
きっと緑系の色ではないかと勝手に思いこんでいる。
木の実が熟れ始めると独特の表情になる。
成熟の証しとして艶っぽく色づき甘酸っぱい香りを漂わせる。
むろんそれは人に知らせるためではない。
子孫を残すための鳥や動物たちへのシグナルである。
木はそこを動けないから種を運んでもらわなければならない。
動くことを禁じられているからいつも堂々としている。
長雨にうたれても強風にさらされても両手を広げてじっと堪えている。
地中深く根を下ろした足は己の意志の強さである。
木は巡る季節の歩みに合わせて毎年同じ場所で花を咲かせ実を結ぶ。
実はゆっくりと時を紡ぎながら熟れていく。
鳥も獣も人も木の実に引き寄せられる。
木の実にはたくさんの英知が詰まっている。
アダムとイブが果実から知恵をもらったように。
そうして昔々桃の中から男の子が誕生したように。
<おわび>
今いちばん瑞々しくて食べ頃を迎えているはずの桃の絵が載せられませんでした。
以前撮影した現場がどうしても見つけられなかったからです。
何回も歩き回り、自転車でも探したのですがだめでした。
垣根越しに撮った記憶は鮮明に残っていますが、それがどこだったのかわかりません。
まったく歳はとりたくないものです。